2013年8月2日金曜日

全柔連は何を間違えたのか?-次の目標に向けて

日本柔道が危うい。
いよいよ国民から見放されてしまうかもしれない事態になってきた。

報道では、上村会長の辞任がフォーカスされているようだが、7月30日に行われた全日本柔道連盟の評議員会においては、執行部を含む現職の理事全員の進退を巡り、解任動議の採決が行われ、結果的に反対多数で23人の理事全員が留任となった。


全柔連の不祥事は、ニュースで取り上げられたものだけでもかなりの数に上る。
監督・コーチによる女子日本代表選手への暴力行為、複数の体罰問題、助成金の不正使用、オリンピックの英雄と言われた元選手や理事による暴行事件・セクハラなど、これだけを見るとまるで犯罪の巣窟のようにすら感じてしまう。

この状況において、連盟は十分な原因調査、しかるべき責任の所在、適切な対応策などについて、周囲が納得できるレベルの説明をしていない。

メディアから会長の進退についてコメントを求められても、いずれ辞任するとの発言はあるが、幾度となくその時期は変わってきていた。

   
そんな中、肝心の日本柔道の成績はどうなのだろうか?
振り返ってみたくなった。

柔道界の大きな大会としては、オリンピックと世界選手権がある。

オリンピックにおける柔道は、64年東京大会から正式種目となった。
前回ロンドン大会では金メダル1個を含むメダル獲得総数7個。
総数こそまあまあだが、金1というのは、過去11回のオリンピックではソウル大会と並んで最低獲得数となり、男子金ゼロは初めてのことだった。

世界柔道選手権では、日本は、56年の初参加から最多獲得メダル国となった。
この地位は、第3回大会(61年)のオランダ大会の他、無差別級のみ開催の年、中止など変則的な年を除けば、2010年の28回大会まで25回も日本が独占してきた。

しかし、直近の2011年大会ではフランスにその座を奪われ、2012年がオリンピックだったため雪辱戦は今年8月下旬の大会いかんとなる。

つまり、ここ数年日本柔道は以前のような強さが薄れてきている。

専門家の中には、公式ルールが日本に不利に変更されたり、判定が厳しくなったとの見方もあるが、他の競技との相対比較でみても、以前に比べ総合力が衰えてしまった感は否めない。


改めて、冒頭の評議員会の結果について、上村会長からの最新コメントは、8月下旬に自らを含め現執行部5名が辞職するというものであった。

しかし、これは内閣府の事実上の辞任勧告である、改善策提示の回答期限8月末を受けてのことで、自浄作用によるものではない。

加えて、内閣府は執行部の辞任だけでは不十分、しっかりとガバナンスの強化が図られる改善策の提示が必要と言及しているが、至極当然のことである。


さて、ここで上村氏の役職を整理しておきたい。彼は3つの団体の役職者である。
全日本柔道連盟の会長職、国際柔道連盟(IJF)の指名理事、そして柔道の総本山である講道館館長の3つである。

今回辞任するのは、この内全柔連会長、国際柔道連盟(IJF)指名理事(8月に改選)、講道館館長は留任する意向である。

全柔連新会長は、「外部からの招聘が必要で、理事も全員辞任すべき」という山下泰裕理事の発言で、人事を刷新する方向が検討され始めた。

IJFは8月に改選を控えているので、その結果次第となるため除外する。


ここで、確認したいのは、何故講道館館長は継続なのか?ということだ。
講道館館長という役職は、段位の認定、発行という国内柔道においては、非常に大きな権力を保持できるもので、権力を手放したくないという意向に取られても致し方ない。

専門家には、講道館館長の職をおさえておけば、実質的に影響力は変わらないというむきもある。
範を垂れるべき地位にある人間として、「相応しい行動」と自信を持って説明が可能なのだろうか?


何故、日本柔道界はこのようになってしまったのか?
現在の日本柔道界は明確な次の目標がないからだと私は推測する。

日本柔道は世界の柔道になり、世界柔道連盟には200の国が加盟している。
これは取りも直さず、数の上では歴史上もっとも成功した素晴らしい武道であり、スポーツ競技の1つであることに他ならない。

しかし、国内の競技人口はそれとは逆行で減少しており、フランスが50万を超えているのに比して、日本は20万を割った。剣道の166万人と比較しても、その弱体化は否めない。

頂点を極めた組織がその次の目標が明確でない場合、見られる傾向として推進力は弱まり、規律の空白状態が起こり、自己保身に走る。

本来執行部、理事という役職は名誉職ではなく、マネジメント職である。すなわち、現在と将来に向け更なる発展を目指すための執行責任者である。

過去の偉業の功労者へは、別の形で慰労すべきで、マネジメントは真に柔道という素晴らしい武道をけん引するに相応しい人材から選ばれなければなるまい。


このような状況の今だからこそ、積極的かつ抜本的な対策が必要で、柔道界全体の改革が求められている。

そもそも柔道とは、心身を鍛錬し、人間教育の側面が強い心技体の武道である。単に強い弱いといういわゆる競技の側面だけではない筈で、先達の素晴らしい業績を更に発展させるために、柔道の本当の意義を伝道する役割は、全柔連、講道館が担うべきなのではないだろうか?


毎日、必死に練習している現役の選手が恥ずかしくない「品格」をいち早く取り戻してほしいと切に願う。


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