2013年7月7日日曜日

設問する力-ニホンウナギ減少を受けて

ニホンウナギが無くなる?

土用(2013年入りが19日、丑の日は22日)を目前にして、うなぎの漁獲高減少が止まらない。

どのくらい危ないのか?
それを論じるためには、まず、ニホンウナギの生態について、簡単に知っておくことが必要だと思う。

近年まで殆ど謎だったようだが、最近になりかなりわかってきているそうだ。マリアナ諸島の西側辺り及びグアム島近辺などが産卵場所で、水深約200メートル。

孵化し仔魚(幼魚)になり、その後変態を行い、5センチ程度の「シラスウナギ」になる。
そのまま黒潮にのって生息域の東南アジア沿岸の川を遡り、成熟した後産卵場へ戻る。 

これが、ウナギのライフサイクルのようだ。


現在、国内消費の殆どは、このシラスウナギ漁で捕獲したウナギを中国や、国内数か所で養殖したもので、いわゆる天然のウナギは、国内養殖の1.5%程度。輸入うなぎの消費量も合わせると、0.3%にしかならないという。

その養殖ですら、日本でのシラスウナギの減少は激しい。
1960年近辺がピークで当時およそ230トンあった漁獲高が、
昨年は10トンを切る状況で、2013年は更に深刻化し、5トン強まで落ち込んでいる。ピーク時と比較すると、約140の量だ。


危ないことはご理解頂けたと思う。
しかし、一体何が原因なのか?データだけではさっぱりわからない。

ニュース番組で多くの報道がなされているが、ひたすら、「ウナギが食卓から消える」という類の「演出」ばかりが繰り返され、
減少の原因や、どのような方向で考えるべきか?今、行えることは?など、未来に向けた議論は起こっていないように思える。

番組でよく見かける街頭インタビューのシーン。
ここでも、インタビュアーの問いかけは、不安を煽るにとどまり、従って、回答する人々も「困る」、「頑張って食べる」、「もう閉店するしかない」というトーンである。


この現象、一体どこに問題があるのか?

私は、それは「設問の仕方」にあると考えている。
正しい答えを導けと言っているのではなく、正しい方向で議論すべきだと思うのだ。


専門家に対する設問であれば、専門家しか知りえない示唆、誤解しやすい情報の読み方、本当の意味の漁獲量の危険水域など、考えるべきヒントを回答してもらえるようなポイントを。

街頭のインタビューであれば、インタビューする側が、予め回答者に全体像を伝えたうえで、食する側として出来ることについてを、うなぎ専門店であれば、提供する側としてどのような活動が必要か?または、食する人、養殖する人、漁を行う人、あるいは国、地域に向かって、どのようなメッセージを発信できるかなどのポイント。

メディアは、上記それぞれの観点で、これからの方向性を考え始められるような設問をすることができる筈だ。


ウナギに関して言えば、調査はこれからで、原因が何か?については特定に至っていない。しかし、生態がある程度判明してきており、正しい方向での「設問」はおける。

産卵の数に問題があるのか?仔魚になる数か?シラスウナギになれない理由なのか?シラスウナギの回遊に問題があるのか?東南アジア沿岸地域の環境か?漁場の問題か?産卵に向かう戻りの過程に問題があるのか?

ざっとみても、いくつものポイントは浮かんでくる。専門家であれば更に細分化も、絞り込みも可能であろう。


これと同じような議論に、原発問題があると考えている。今の議論は、再稼働か廃炉か?の二極化の様相だ。

しかし、その前に、この事故の全体像は解っているのか?建設自体に問題があったのか、運用か、あるいは事後の対応なのか、私の理解では何も明確にはなっていないと思う。


設問の仕方とすれば、どこに問題があり、どうすれば防げたのか、今後終息に向け何を行えば良いのか、いつまでに安全に鎮静化するのか?

これが解らないまま、再稼働は言うまでもないが、輸出の拡大、あるいは他原発の全廃の議論は、あまりに早計と言わざるを得ない。

仮に廃炉しても、国内に2万トン以上保有しているとも言われる放射性廃棄物の処理の問題、再処理工場の対応、その他どのようなリスクや危険が存在するのか、全廃に向けた処理のプロセスなど全てが明らかになっているとは思えない。


全体像が解れば、国民一人一人も、自ずと自律的に何をすれば良いのか?は解る。1億人が解って行動すれば、必ず解決できる筈だ。

東電、政府は情報を隠すことに力を使うのではなく、いかにして正しい情報を開示すべきか、それによってどう解決するかに尽力して欲しい。


今年の土用の丑の日、どんな気持ちで迎えられるのか?七夕の今日、正しい設問で自問自答してみてはいかが?



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