2013年6月16日日曜日

温故知新-百貨店動向をみて

6月13日に、大阪阿倍野に「あべのハルカス近鉄本店のタワー館」がOpenした。
来年のグランドオープン時、全てが完成すれば地上300メートル、売り場面積10万㎡の堂々たる複合施設となる。

近鉄百貨店のコンセプトは”モノ・コト・ヒトとの出会いが暮らしを彩る「街のような場」”で、オープン当日のニュース番組での店長のコメントは「テーマパークのような存在」を目指すとこのことだった。

この意味するところ、昔の百貨店がそうであったように、百貨店に行く事がひとつのイベントになるような場所を復活させたいという願いのようだ。

東では、今年3月にグランドオープンした、新宿伊勢丹もリモデル後の正面玄関は80年前のものに戻し、コンセプトは「世界最高のファッションミュージアム」。
90年代にも「解放区」というコンセプトで伊勢丹らしさを提案していたが、今回リモデルにあたって「東京解放区」というコンセプトを復活させている。

ある意味、盛況だった頃の百貨店を再現するために、今の旬のコンセプトをはっきり打ち出してゆくということの現れだと思う。まさに「温故知新」

では、最近の百貨店は、どのように見られていたのだろうか?

多くの店舗が建つが、正直どの百貨店に行ってもあまり変わり映えがせず、同じようなブランド、同じような専門店が出店し、隣接する地域にひしめき合って立ち並んでいるだけではなかっただろうか?

低迷が続いて久しい百貨店業界だが、各社の中期目標などをみると大規模投資をして目指す先は、昔の百貨店の位置づけ、
すなわち、行きたい場所、行く事がイベントになる場所、一日滞在する場所のようだ。

では、いつから行きたい場所、特別な場所で無くなったのだろう?

そんな疑問を巡らせていたら、昨年プライベートで旅行をしたヨルダンを思い出した。
シリアの内戦の煽りを受け、大量の難民がヨルダンに押し寄せているのだが、寧ろ積極的に受け入れている。

その受け入れの仕方が、難民に対するリスペクト(尊敬)を感じさせる内容で、とても素晴らしいものであった。

普通災害等で難民になった人々に対する救援の殆どは、寝泊りする場所、食事の提供を行うことがメインになる。我が国における震災後の被災者支援も同様だ。

ただ、その多くは場所はともかく、食事については支援者が作って配るという方法か、出来合いのレトルトやインスタント食品を配給するというものだ。
2,3日であればとても助かるが、長期になったらどうであろう?

いつしか、配ってくれるのが当たりまえ、何故今日は遅いのか?という発想になり、遅れに対する不満、苦情が大きくなるものだ。



しかし、ヨルダンのそれは違っていた。そもそも配給はしないし、作ったものを配らない。配給するのは調理できる場所と、食材をスーパー等で交換できる引換券なのだ。

この2つの方法、何が大きく違うのか?
ヨルダンが採った方法では、難民の人々は、自分たちで創意工夫して1か月間を考えながら、献立し、食材も選び、自分たちでライフスタイルを確立できる。
翻って、前者は上記のように、いつしか支援してもらうのが当たり前で、それを待つ集団になってしまい、スケジュールも配給に合わせる毎日になってしまうのではないだろうか。

誰にも悪意があるわけではない。純粋に良かれと思ってのことだろう。

違いは支援に対する考え方と、相手に対する真の意味での尊敬の念を持つか否かである。
ヨルダンの難民政策では、おんぶにだっこのような政策をするのは本質的には失礼で、尊厳のある民族ならば、小さくても自由を与えることが、重要だと考えているのだ。

更に言えば、地域のスーパーも潤う。その引換券を政府に出せば現金に換えられる。いわばWin-winの関係である。素晴らしい方法だと感じた。

話をもとに戻すが、低迷期の百貨店が単なる「場貸し業」ではなく、全ての店舗において、本当に特徴を出し、どのようなお客様にどのような差別化した価値を提供出来るのかを真摯に考えてきたのだろうか?

出店するブランド、専門店と侃々諤々の議論を行い、選定してきたのか?という疑問はやはり残る。

行きたい場所にするのなら、競合はXX百貨店ではなく、ディズニーランドや、人気のリゾート地かもしれない。仮にそうだとすれば、場所の使い方はこれまでと同じで良いのか?店の作り方、人の流れ、滞留時間の考え方、必要な施設は?

まだまだ出来ることは沢山あると思う。
いや、寧ろ手つかず、未検討の領域が山ほどあるのではないだろうか?

大規模投資を次々に行っている百貨店に、単なる場所の提供をするという発想ではなく、来て頂くお客様に充実した時間を提供する、
「行きたい場所」、「憧れの場所」に出来るよう大いに切磋琢磨しながら、驚くような変革を成し遂げてもらいたい。

素晴らしい場の出現を楽しみに、生まれ戻った(?)百貨店のお手並みを拝見したい。


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