2013年6月14日金曜日

トップの責任を考える-統一球隠ぺい問題

NPB(日本野球機構)コミッショナーの謝罪会見をみて感じたことは、トップとは一体どのような役割なのか?どのような責任を負っている存在なのか?という疑問だ。

今、話題になっている統一球仕様変更の隠ぺい騒動だが、加藤コミッショナーは、「知らなかった」「これは不祥事ではない」という発言に終始した。
これが、企業であればどうであろう?これだけ大きな問題を起こした会社のトップ-この場合該当する立場としては、CEO(最高経営責任者)だ-が会見で、私は知らなかったと発言するのだろうか?

そもそも何の釈明なのだろう?「私は潔白です」という趣旨の発言をして何の意味があるのか?
どのような責任を取ったことになるのか?甚だ疑問だ。
問題は、知っていたか否かではない筈だ。メディアからの自身の進退に関する質問に対しても、「辞めずにガバナンスを強化する」という趣旨の発言をしているが、それは全くあべこべで、正に”本末転倒”と言わざるを得ない。

そもそもコミッショナーとは何をする立場なのかを検証してみよう。
日本プロフェッショナル野球協約2011(公開されている最新版)の第2章はコミッショナーの章だ。
同第8条に、職権および職務が記載されており、抄訳するとコミッショナーは日本プロフェッショナル野球組織の代表で、野球協約に反する事実がある場合、自らの名において制裁を科すことができる立場なのだ。また、コミッショナーが下す指令、裁定、裁決および制裁は最終決定であり、全ての関係者は従わなくてはならない。とある

改めて考えてみよう。上記の観点でいえば、今回のような不祥事が起こらないよう管理監督の最高責任を初めから負っている筈で、現在のガバナンスに問題があると考えているなら、それは取りも直さず自らの管理能力の欠如を明らかにしているに他ならない。

統一球を変更するのであれば、正式な手続きのもと、関係当事者に向け変更を明らかにすれば済む話だった。にも関わらず、妥当な理由もなく言わば組織で隠ぺいし、納入業者にも嘘をつかせ、プロ野球選手会も完全に蚊帳の外で欺かれ、ファンに対しても騙し討ちをしたことになる。

このような事態にならないために、管理監督機能としてコミッショナーという役割があったわけで、仮に知らなかったとしても、会見までに事の真偽を最高責任者として糺すべき立場であり、私は知らなかったという発言は見当はずれな発言で、職務怠慢というべきものであろう。

つまり、野球機構はファン、選手を裏切り、納入業者も無理やり巻き込み、協約違反と報告義務違反を犯し、更に隠ぺいした。それを取り締まる筈のコミッショナーは知らされなかっただけに留まらず、その後の処理でろくに調べもせずに、「不祥事ではない」という発言をする無能ぶりを露呈したというのが顛末だろう。

しかも、シーズン約1/3を消化したこの時期に、おまけにこの会見はナイトゲームが行われている最中でどこまでプロ野球ファン、選手を愚弄すれば気が済むのかと呆れるばかりだ。

上述の協約でわかる通り、コミッショナーは絶大なる権力を持っている最高責任者だ。

それを踏まえれば、事前に知らされていなかった事実は言及したにせよ、その一切の責任は自らの管理能力の無さにあり、不徳の致すところであることを認めることが出発点であろう。

すべき行動は全力をあげて全貌を明らかにするとともに、何故起こったかの本質的な原因を明確に究明し、再発防止策を速やかに策定した後、全責任を取り職を辞するとともに、後任にしっかりと引き継ぎを行うことこそ、トップの果たすべき役割だと考える。

日本相撲協会、全柔連と合わせ戦後日本に君臨した大団体が、相次いで不祥事を起こしていることは決して偶然ではない。目標を失った嘗ての功労者にいわば「上がり」のポストを政治的に提供した報いが一気に噴き出しているのだと思う。

本日、新たな動きがあるようだが保身を図るのでなく、プロ野球のトップとして相応しい行動をすることで範を示して欲しい。そしてそこから、日本の体質改善の第一歩を踏む大きなチャンスにできるような崇高な立ち居振る舞いを期待したい。






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